【発達心理学】乳児期~青年期の特徴について

心理学の一つに「発達心理学」というものがあります。人間の発達段階ごとに心理学的な観点から考えるものです。乳児期、幼児期、児童期、青年期の特徴について紹介します。

そもそも「発達」とは、生涯における人間のさまざまな変化を表す言葉ですが、身体的な変化が中心である「成長」とは異なり、精神的な変化も含めた包括的な意味の変化を表す言葉として扱われています。

とはいえ、発達の要因がなんであるか、具体的には分かっていません。以前から、発達の要因が「遺伝」なのか「環境」なのかという論争が長い間繰り広げられています。見ていきましょう。

 

「発達心理学」それぞれの特徴

まずは行動主義心理学のワトソンによって、人の発達は生後の環境における学習によって決まる、という環境優位説が唱えられました。

これに対して、発達心理学者のゲゼルは双子に階段のぼりの実験をさせたところ、訓練の期間に寄らず、身体的に十分な時期が来るとどちらも階段のぼりができるようになったことから、遺伝的要因を重視する成熟優位説を唱えました。

 

なお、ある学習(上記の実験では階段のぼり)を効果的にするために必要な、学習者の発達の準備状態を「レディネス」と呼びます。

その後もいろいろな学者によりいろいろな説が唱えられましたが、現在では個々の特性と環境の相互作用によって発達が促される、という認識が一般的となっています。

 

さて、発達について考える際の一般的な区分があります。生後1歳ごろまでの乳児期、5,6歳ごろまでの幼児期、12歳ごろまでの児童期、20代半ばごろまでの青年期、60歳ごろまでの成人期、それ以降の老年期の6段階です。

特に重要な、乳児期~青年期についてみていきましょう。

 

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乳児期の特徴

まずは乳児期です。この時期は母子のアタッチメント(愛着)が成立する時期です。アタッチメントとは、乳児が主に母親に抱く情愛的な結びつきのことです。

たとえば、乳児の泣き声にや笑顔に母親が自然に反応することや、母親とそれ以外の人を識別し、知らない人の前では泣いたりすることなどから、乳児の母親に対するアタッチメントが形成されていることが分かります。

 

興味深い実験として、ハーロウによるアタッチメントの実験があります。サルの子供に、母ザルに似せて作った模型を2体与えます。一体は布製ですが、授乳ができません。

もう一体は針金製ですが、授乳ビンを設置し、授乳ができるようにしてあります。

 

すると、子ザルは布製の模型を好み、恐怖を感じると布製の模型にしがみつくことが観察されました。この時期の経験を初期経験といいます。

人間でも、乳児期のアタッチメントの形成が不十分だと、知的発達の遅れや情緒表現の未熟などの問題がみられ、十分な精神発達を阻害することがある、とも言われています。

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幼児期はの特徴「三つ山問題」

次に、幼児期についてです。この時期は自我が発達し、親のしつけとの葛藤から第一反抗期がみられます。一方で、自分の視点からしか物事をとらえられない自己中心的な考え方も持ち合わせています。

心理学者のピアジェによる「三つ山問題」が有名です。これは、三色の山を配置し、子供のいる位置の反対側から三つの山を見るとどう見えるかを問う問題です。

 

反対側からの見え方を聞かれているにも関わらず、幼児は自分の位置から見える見え方を答えます。このように、自分以外の視点から物事を考えることができないことが分かります。

他にも、幼児期には物質にも命があると考えるアニミズムや、物事を人間の表情のようにとらえる「相貌的知覚」といった概念を持っていると言われています。

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児童期の特徴「ギャング・エイジ」「保存概念」

続く児童期では、身体的な発達も知的な発達も著しい時期です。ここでは学校による同年代との交流が活発となることもあり、社会性の発達が促されます。

特に児童期の後期を「ギャング・エイジ」と呼び、同性の、強い結束力を持つ仲間集団を作って行動をともにするようになります。

 

ここから、対人関係のスキルを習得したり、行動規範を考えるようになったりします。また、知能の面では「保存概念」を獲得するとされます。

「保存概念」とは、数や面積・体積など、見た目が変わっても量は変わらないものの性質のことを表します。前述の自己中心性も薄れていき、知的能力も著しく発達していきます。

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青年期の特徴「アイデンティティの確立」

続く青年期は、まず前期に第二次性徴期を迎えることで心身ともに大きく変化をします。

自立心が芽生え始め、「心理的離乳」を果たそうとする時期です。この時期はエリクソンの発達理論の中心である「アイデンティティの確立」を果たすべき時期でもあります。

 

「自分は何者なのか」などといった、自己への問いの答えを見つけ、自己を確立させるためには、青年期以前の発達段階におけるさまざまな問題(乳児期のアタッチメントの成立など)を乗り越えていくことが重要であるといいます。

一方で、これに失敗すると「自分は何をすればいいのかわからない」という状態に陥ってしまいます。これを「アイデンティティの拡散」といいます。アイデンティティが確立していないと、自分への自信がなく、他人の意見に従うだけの人間になってしまいます。

このように、発達段階によっていろいろな心理的な特徴や問題があることが分かります。それを意識したうえで、適切な対処ができると良いのではないでしょうか。

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