パワハラをする上司の心理的な特徴とは?

パワハラをする上司の心理的な特徴について。近頃さかんにメディアなどで取り上げられる「働き方改革」ですが、この政策は本当に多くの労働者を厳しい労働環境から救ってくれるのでしょうか。

 

非正規の処遇改善(同一労働同一賃金など)

「働き方改革」は、安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」の実現のための政策ですが、これまで有識者会議を重ねて、2017年3月には実行計画の政府案が発表されています。以下にいくつか主なものを挙げてみます。

  • 長時間労働の是正
  • 病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障碍者就労の推進
  • 女性・若者が活躍しやすい環境整備
  • 高齢者の就業促進

このほか4項目、計9項目の実行計画が発表されましたが、実はこの中にパワハラ(パワーハラスメント)などのハラスメントに関する項目はありません。ハラスメントは人道的な問題ですから、政策の実行計画に掲載するような性質のものではないと理解すべきなのでしょうか。

昨今の労働者の悲しいニュースは「過酷な残業」といった長時間労働にその原因を求めるような報道が多いのですが、実際は労働時間だけではなく「非人道的な行為」も大きく影響しているのではないかと推測します。

 

労働者(部下)が精神的に追い込まれる原因としては、むしろ上司などからのパワハラの方がより強いダメージを与えているのではないでしょうか。

ここではこうした上司によるパワハラをタイプ別に分類し、それぞれ、上司のどのような心理状態が非人道的な行為をさせるのかを検証してみたいと思います。

 

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タイプ別パワハラ上司の心理的特徴

自分の物差しですべてを計ってしまうタイプ

自分もこうして上司から指導してもらい成長できたのだから、部下も当然それを望んでいるはずだと決めつけてしまうタイプです。もちろん部下はそんなことは望んでいないのですが、異常に思い込みが激しいのです。例を挙げると、過剰に熱血指導をする上司などがそれに当たります。

もう時代が違いますので若い部下にとっては「ありがた迷惑」なことが多いのですが、そういうところに気がつかない。いわば鈍感なのです。「自分はこのくらい厳しく言われても平気だったのだからコイツも大丈夫だろう」などという発想が安易に出てきてしまうのです。

 

 

相手の立場に立って物事を考えられないタイプ

鈍感な点はタイプ①と同じですが、こちらは相手の立場にすら立てないタイプです。起業家として成功した人にもこういうタイプの人が結構います。

その冷徹さがビジネスにおいては功を奏したようですが、しかし部下をマネジメントをする立場からしたら不適格なタイプなのかもしれません。

 

仕事の喜びや楽しさを部下と共有が出来ない。コミュニケーションがうまく取れない。よって相手がどう感じているのかという所まで考えが及びません。それが傍からは冷徹に見えるらしいのです。

他の特徴としては、細かいところまで目が届き過ぎる傾向があり、部下の小さなミスも指摘せずにはいられないところがあります。

 

 

自分かわいさに政敵を攻撃するタイプ

このタイプの上司は優秀な部下に対して敵意を持ってしまいます。自分の立場や地位を脅かす存在と思ってしまい、潰しにかかってしまうのです。いわば「保身第一型」とでも言いましょうか。自分の部下を「将来は会社を背負って立つ人材」に育て上げようという親心も遠謀もありません。

突き詰めれば自分に自信がないことの顕れなのかもしれません。このタイプから標的にされるターゲットは、部下に限らず同僚であることも多いようです。

 

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狡猾、攻撃的、共感性なし、独尊感、幼児的万能感、すべて持ち合わせるマルチタイプ

幼少期に友達や部活動の先輩などから揉まれた経験がなく、ヒエラルキーの感覚を持ち合わせていないため、傍若無人な振る舞いができてしまいます。また、このタイプには親から厳し過ぎる躾をされて育った人が多いようです。

親に認めてもらいたい、イコール「結果を出さなければ」という強迫観念を持ち続けてきたため他人を思いやることよりも、まずは結果を求めます。よって他者への共感性はありません。

特徴としては、声がデカい、自分の主張を通す、仕事は出来る人が多い、など。そのほかに、取り巻きを持つことを好み、気に入らないことには感情をむき出しにする、といった子供っぽい傾向もあるようです。幼児的万能感というやつです。

 

 

勘違いの幼児的万能意識タイプ(部下)

1つ前の部下版です。こういうタイプの部下を持つことで今度は上司が精神的に追い込まれますし、周囲に居る同僚もストレスに感じてしまいます。特徴としては前者とほぼ同じと考えてよく、上手く行かないと叫んで駄々をこねる、幼児返り、攻撃的、などです。

攻撃の矛先が上司を飛び越えて会社そのものになったりしますから厄介です。過剰に自信家であり、自分の待遇に常々不満を持っているのも特徴です。

自分に非があるなどとは微塵も思いませんので、最終的には会社を相手に、労働基準監督署に駆け込んで会社側の非を訴えたりします。弱者の立場を利用する狡猾さも持ち合わせています。

 

 

以上、5つのタイプを見て来ましたが、こうして見てみるとひとつ特徴的なのは、幼年期の家庭における「躾」や学生時代の環境が、意外にも強い影響を及ぼしていることではないでしょうか。

「三つ子の魂百まで」と言いますが、確かにその通りかも知れません。そして、これについては採用する企業側も、数回の面接程度では見抜くことが出来ない部分です。こうしたパワハラの下地を持つ人を採用するかしないかは、もはや運としか言えません。

 

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働き方改革の前に日本企業の抜本的構造改革が必要か?

日本企業では「就職=家族の一員になる」と捉える考え方が、高度経済成長期からバブル期におよぶまで主流でした。しかしバブル崩壊後は「年功序列・終身雇用」が否定されはじめ、そのデメリットを耳にすることの方が圧倒的に多くなってきました。

もちろんメリットもあります。上手く嵌まれば、社員は「家族」からのサポートと終身雇用の安心感とによって、精神的な安定を得られます。その安定感の下で仕事に取り組むと「安定した成績」が個人も企業も残せたのです。

 

経済の動きもそれほど速くなく、「量の経済」が成り立っていた時代だったからこそ、このやり方は日本経済にとてもフィットしました。こうした日本的な企業経営は、1990年代になって、多くの企業が「成果主義」を掲げたことにより一見絶滅したかに思われましたが、実はバブル崩壊後もしっかり生き残っていたようです。

表面上(対外的)は実力主義を標榜しつつ、新卒一括採用や給与の保障部分の維持などが脈々と受け継がれているという事実。これが日本企業が旧来型から欧米型に完全に脱皮出来ていない証拠です。

 

それは今の経営層がそうした中で育ってきたという背景があるからかもしれません。居心地のよい環境を捨て去ることはそう簡単ではないからです。

しかし、そんな環境が上記した様々なタイプのパワハラ社員を生み出し、増長させてしまったということを我々は反省しなければならないはずです。

もし、欧米企業のように「会社は自分のスキルを使って仕事をする所」と割り切れていて、結びつきがそこまで濃密でなければ、パワハラは発生すらしないか、発生したとしても被害者にとって逃げ道があったのでしょうから。