【災害心理学】人が逃げ遅れてしまう理由は?

人が逃げ遅れてしまう理由を災害心理学を使って説明します。日本は災害の多い国です。防災や避難訓練も他国より、かなり行っている国です。それでも、災害が起きた時逃げ遅れてしまう人がいます。これはどうしてでしょう。人間の心理が悪い方に働いた場合、このような逃げ遅れが発生します。

 

「災害心理学」で人が逃げ遅れてしまう理由を

災害発生時の心理のメカニズム

災害が起きた時、人間はどんな行動を起こすでしょう。ある飛行機事故による生存者の証言があります。

人々は、災害に際し電話をしたり、身の回りの物をしまったり、パソコンをいじっていたりした。とあります。緊急にも関わらず、何故人はこのような行動をするのでしょうか。

 

恐怖から気を逸らそうとする場合もあるでしょう。パニックになり、正常な行動が出来なくなる人もいるかもしれません。しかし、多くは、「そんな大災害じゃない」「みんながいるから平気」「すぐにどうこうなる訳じゃないはず」と考えてしまいます。

これを『正常バイアス』と呼びます。人間は自分にそんな事が起きる訳がないと、正常であるべき日常のバイアスがかかり、緊急の危機感が無くなってしまうのです。

 

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脳が間違えた判断をくだす

日頃から何か起きる度に、避難したり、怯えたり、不安になっていたらストレスが溜まるだけ。そんなストレスによる疲労を避けようと脳が平安を守るために『大丈夫』という指令をしてしまうのです。

これは日常の場合、必要な脳の判断ですが、緊急時にこれが働くと、逃げ遅れてしまい大変な事になってしまうのです。

 

災害時の被害者の多くは、この逃げ遅れから起きている事が分かって来ています。これを正常に切り替えるためには、どうしたらよいのでしょうか。

日頃の訓練しかありません。訓練をする事で、このケースの場合にはどう行動するかを体に叩き込むしかないのです。簡単に大丈夫と安心する前に、本当に大丈夫なのかの確認の行動も必要です。

 

 

弱者の心理状態

災害弱者というのは、1人で行動するのが困難な人たちの事です。赤ちゃんを抱えている人、高齢者、車椅子の人、病気で動けない人などです。

このような災害弱者の人たちが、災害に面した時どんな心理になるかというと、逃げるだけの体力がないためのあきらめの気持ち、焦りや恐怖、または不安感が募ります。

 

それにより、体が思うように動かないし、頭の中もパニックになって正常な考えが浮かばなくなってしまうのです。特に高齢者は、心理学から見ても危機などを察知する5感が鈍くなる事が分かっています。

また、災害情報を聞く手段をテレビからしか知らない人も多く、停電になれば、情報源がシャットアウトされてしまいます。そんな弱者を助けるのは強者の役目になります。

 

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助け合いが必要

強者が手を貸して弱者を助ける協力関係が大事になります。近所に災害弱者のいる家を把握しておきましょう。

声を掛け合う事により、危機感を増幅させ、逃げないといけないという心理に転換します。1人では正常バイアスから抜けられなくても、誰かの一言で現実にかえる事が出来るからです。

 

近所付き合いが希薄になった昨今ですが、災害が起きた場合、必ず人の手を借りないといけなくなります。誰も1人では何も出来ない状況になるのです。

食べ物にしても、物資を運んで貰わないと行けません。炊き出しなどでも、協力しないとなりません。帰る家を失った場合、寝泊まりする場所が必要です。

これら全てが、誰かの手を借りないと出来ません。逃げ遅れが起きないためにも、被害者を少なくするためにも、助け合いが必要なのです。

 

 

災害後のケア

災害が起きた後の人々の心理状態も、理解し気づく事が大切になります。肉親を亡くした人の心理は、気づいてあげないと二次的被害が起きてしまうからです。肉親だけでなく、家や財産を全て失う人も同じです。災害被災者の心理的ストレスには、段階があります。

  • 1段階→初めは災害による恐怖。
  • 2段階→助かった安堵感
  • 3段階→亡くなった者への喪失感
  • 4段階→被災生活のストレス

この段階を把握し、被災者の様子に気をつけないと自殺という二次災害が起きてしまう可能性があります。

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心的トラウマ

日にちが経ってもなかなか恐怖や不安感が抜けず、何回も恐ろしい場面が頭に浮かび、現実の全体像より、記憶に刻まれた恐怖感が強く出てしまいます。

フラッシュバックのように何度も何度もその時の恐ろしい場面が頭によぎり離れなくなってしまっているのです。
このような状態を心的トラウマと言います。この心的トラウマになるのが、第三段階になります。喪失感、虚脱感、再建に対する不安、うつ病が発生するのがこの時期です。

 

この時期に心のケアが必要になります。しかし、それだけでは被災者を助ける事になりません。これからの生活再建に向けての相談や支援が必要です。

また、健康の不安なども高齢者にはあるでしょう。災害による負担以上に生活再建の負担は、高齢になればなるほど重くなるからです。

 

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災害心理には日頃の訓練

体が記憶するぐらいの訓練をする事で、正常バイアスをひっくり返すしかありません。災害に対する怖さは知っていても、なかなか危機感を持てないのが人間なのです。

本当の危険が迫った時、それを察知し、すぐ行動に移して逃げる事。これさえ出来れば逃げ遅れの被災者を減らす事が出来るでしょう。