自己防衛の仕組み「適応機制」の種類|不適応行動とは?

人が自分自身の持つ欲求を満たしながら、環境とも調和を取れている状態を「適応」といいます。環境、と一口に言っても、社会的な要請によるもの(たとえば、対人関係や社会規範など)と個人個人の目標によるものがあります。

 

自己防衛の仕組み「適応機制」とは?

それぞれ「社会的適応」「自己適応」などと呼ばれます。社会的に適応できているならば、当然周りからの評価は高くなりますし、その人自身の集団への帰属意識も高まります。

また、自己適応ができているならば、自己存在感や充実感を持てるようになり、自分を肯定的にとらえることができます。どちらにせよ、適応できることによるメリットはとても大きなものです。

 

とはいえ、現実世界が必ずしもうまく適応できるかというと、そうではないことがほとんどではないでしょうか。こうした葛藤が大きな負担になるような場合、自我を守ろうとするために、さまざまな方法で自己防衛に走ります。

これらの自己防衛の仕組みは、精神分析学を提唱して多大な影響を与えたフロイトによって、「適応機制」と呼ばれ12種類に分類されています。例も交えながら具体的に見てみましょう。

 

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適応機制の種類

合理化

不満や失敗について、それっぽい理屈をあげて正当化(もしくは言い訳)すること。

たとえば、数学のテストで悪い点だったことに対して「将来、数学なんて使わないから勉強しても意味がない」などと思い込むなど。

 

 

取り入れ

他人の価値観を取り入れて自分の価値観としてしまうこと。好きな芸能人のファッションをすぐにまねたがるなど。

 

 

補償

ある面における自分の不満を補うために、ほか面で努力をすること。勉強が苦手な人が、おしゃれなど自分の見た目を良くすることにとても熱心である(逆もしかり)など。

 

 

代償

目標を達成したいが、どうしても叶えられないとき、対象を似たものに置き換えること。既婚者を好きになってしまったが、結婚できないので似たタイプの独身を好きだと思ってしまうなど。

 

 

投影

自分の持つ認めがたい欲求を、自分でなく相手が持っているとすること。本当は自分が嫌いなのに、「きっとあの人は私のことを嫌っている」と思い込むなど。

 

 

抑圧

不満や葛藤の原因となっている動機や欲求を、無意識の世界に押しやってしまうこと。事故の前後の記憶がなくなるなど。

 

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反動形成

自分の弱点について責められることを防ぐため、正反対の行動や態度をとってしまうこと。好きな人に意地悪をしてしまったり、気弱な人が自信過剰なほど傲慢にふるまってしまうなど。

 

 

昇華

社会的に認められにくい欲求を、社会的に認められるような形で努力すること。

相手を攻撃したい欲求を格闘技などのスポーツで努力することで解消したり、性的な欲求を芸術作品で表現することで解消したりするなど。

 

 

逃避

困難な状況から逃げることで、葛藤や不満から逃れようとすること。人間関係に不満があるため、他人を避けて孤立したり、関係のないことに熱中することで逃避するなど。

「仕事がつらいので、病気になって入院したい」などもこれにあたる。

 

 

退行

困難な状況におかれたときに、合理的に考えることを放棄して、未発達な段階に退行すること。新しく弟や妹ができた子供が、親の気を引こうとして再び指吸いを始めてしまうことなどがある。

 

 

固着

一定の行動を繰り返すことで気を紛らわすこと。頭をかいたり、舌を出すことを繰り返してしまうなど。

 

 

攻撃

何かを破壊したり、反抗的な態度をとるなどして欲求不満を解消しようとすること。八つ当たり、罵詈雑言を浴びせることもあれば、自傷行為に走る場合もある。

 

 

このようになります。これを念頭に置いて自分や相手の行動・言動をよく観察してみると、本心であったり、ストレスを感じているかどうかなど見えてくることがあります。

さて、これらは欲求不満が解消されないことが原因で、自己を適応させようとして働く防衛機能ですが、一方で、「不適応行動」と呼ばれるものがあります。

 

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不適応行動とは?

これは、主に社会的環境に即さないような行動のことを表します。「非社会的行動」と「反社会的行動」の2つに分類されます。

 

 

非社会的行動

「非社会的行動」とは、自分の社会的な立場を無視した行動のことです。極度の引っ込み思案などの情緒的に問題があるものが含まれます。いくつか具体的な例を見ていきましょう。

まずは「不登校」。学校の人間関係などに適応できないなど、不登校になってしまう原因はさまざまあるとされ、現在は統一的な見解はありません。

 

「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」と呼ばれる、過去のトラウマが原因となって、不安や抑うつ感として症状が現れるものもあります。

正常な言語能力を持っているのに話せなくなってしまう「緘黙」という症状もあります。学校に行くと話せなくなる「学校緘黙」など、特定の状況になると話せなくなる場合が多いです。

さらには拒食症や過食などの摂食障害も不適応行動の一種です。

 

 

反社会的行動

一方で、「反社会的行動」には暴力やいじめ、放火や殺人などの犯罪行動のことになります。

このように、社会的、あるいは自己の目標による要請と、現状の差によってさまざまな行動が引き起こされます。これらに正しく対処し、欲求を解消しながら適応していくことが大切です。