病気が原因のストレスに負けない心理について。一般に、病気の診断を聞いた人は不安になります。病気のことが気になり、ストレスになる人も多いでしょう。日常生活にも支障が出てしまい、うつ状態を引き起こすこともあります。
一方、病気の診断を受けるとすぐ、どのような治療法があるのか、どの治療法を選ぶのがベストか、適切な病院はどこか、治療法に卓越した医者はいるかなど調べる人もいます。あらゆる事実を調べて、選択肢の中から決断し、その後実行に移すという人です。
前者は病気というストレスに負けてしまう人、後者は病気に積極的に立ち向かっていく人と言えるでしょう。病気になっても落ち込まないでいるために、病気に立ち向かう心理をご紹介します。
病気が原因のストレスに負けない心理
自分の病気について徹底的に情報を集めるという心理
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉にもあるとおり、まず病気に対する方策を立てるために、自分の病気について詳しく知ることは重要です。意外なことですが、自分の病名や症状についてよく知らない医者任せの人が多いのです。
もしかすると、「患者が多くて先生は忙しいから」「先生にいろいろ質問すると失礼かも…」「しつこく質問すると嫌われるのではないか」など心配するからかもしれません。しかしながら、自分の病気について情報を得るための手っ取り早い方法は主治医から説明を聞くことです。
自分の体のことですから積極的に質問し、自己責任を果たしましょう。前もって聞きたいことをまとめておくこともできますし、長引きそうな時は別の時にゆっくり時間を設けてもらうようにすることもできます。情報を得る2番目の方法はインターネットです。
特に、病気に詳しい最新の情報が載せられているのは米国のサイトです。医師が見てそのまま臨床に役立つガイドラインもあります。「専門用語があるから理解できない」「英語で書かれているから難しい」という心理になる人も多いですが、検索してみると、患者さん向けの分かりやすいサイトもありますので活用してみてください。
自分の病気についてよく調べて、多くの専門家の意見を参考にし、治療法を選んでいくなら、より良い治療を受けることができるでしょう。
完全に治せる病気は積極的に治療を受けるという心理
完全に治せる病気とは薬物治療や外科治療などで治すことができる病気です。例えば、風邪やインフルエンザ、肺炎や結核、膀胱炎や中耳炎、食中毒など多くの感染症があります。外傷や初期の悪性腫瘍など他にもいろいろあるでしょう。
自分の病気について徹底的に調べた後、治る病気であると分かったら、あらゆる可能性に挑戦しましょう。感染症の場合、病状が上向くと一気に回復することがあります。しかしながら、重症の場合は絶対に治るという保証はありません。
命を落とすことも考えられますが、絶対に治ってみせるという強い意志を持って頑張るしかありません。つらい治療を受けても病気が改善せず、むしろ悪化しているという場合もあります。そのような時でも気力を保ち生きることを思い続けるというのは難しいこと。
しかしながら、世の中には自分ではどうにもならないことがたくさんある一方で、頭の中で考えることはどうにでもなります。頭の中で考えることは自由だからです。「もう治らない」と落ち込んで生きるよりも、「絶対に治ろう」と思って生きる方が病気にも良いでしょう。
また、病状が安定しない時は検査値も変動します。ある検査値は良くなっても、他の検査値は悪くなっていたり、新たな合併症が出ることもあります。
明るく前向きでいるために、一つでも良くなったところがあればそれを評価して喜ぶことが重要です。「あそこが悪い」「ここも悪い」と言う人は自分で病気を作り出していることになります。
慢性化する病気は長くつき合う術を見出すという心理
慢性化する病気とは一生付き合わなければならない病気です。例えば、狭心症や心筋梗塞、糖尿病や高血圧、慢性肝炎や肝硬変、肺気腫や膠原病、慢性腎炎など多くの病気があります。
このような病気になると、薬を飲み続けることや定期的に通院すること、悪化すると入院することなど毎日の生活が影響を受けるでしょう。「同僚に薬を飲む姿を見られたくない」「病気を知られたくない」「会社に休みを申請しにくい」と言った心理になることもあります。
慢性の病気を抱えた人が陥りがちなのは病気のとりこになってしまうことです。生活だけでなく心の中にも病気のことが居座り、ふとした時に頭の中でよぎることが多いなどです。
「ああなったらどうしよう」「こうなったらどうしよう」という心理になり、寝ても覚めても病気のことが頭から離れません。これでは人生を楽しむことが難しくなります。一方、慢性の病気を抱えながらも活動的な人もいます。
例えば、慢性肺疾患のため在宅酸素療法を受けながら自分のやりたいこと、例えば旅行に行くことなどを続けている人、慢性呼吸器疾患の気管支拡張症を抱えながら仕事をしている人などです。
このような人たちに共通しているのは病気のとらえ方のバランスが非常に良いことです。「月一回の通院は薬をもらうためではなく、健康に気をつけることを思い出させてくれる機会」「病気があるから無理をしない」といった心理で病気のとりこにならず毎日を一生懸命生きています。
病気に遠ざかりすぎず、近すぎないというスタンスで長く付き合う術を身につけると良いですね。
まとめ
病気の診断がついた時、反応には個人差があります。置かれた状況や人生経験、性格などの要素に左右されることが多いかもしれません。しかしながら、病気に負けない気持ちは病気の経過を左右するというポイントも覚えておくと良いでしょう。
実際、病気のストレスにどのように立ち向かっていくかによって、ガンの予後が変化することを示した報告があります。術後3ヶ月経過した乳がん患者に乳がんに対して、どのように臨んだかを面接したところ、4つのタイプのグループに分かれました。
- 闘争心を持って乳がんに立ち向かうタイプ
- 冷静に受け止めて適切に対応するタイプ
- 乳がんであることに諦めと絶望を感じるタイプ
- 乳がんであることを忘れているかのように否認するタイプ
その後、10年以上の経過を調べたところ、最も予後が順調だったのが①のタイプ、一方、最も予後が悪かったのは③のタイプでした。つまり、「もうダメだ」と諦めるよりも「絶対良くなってみせる」という気持ちを持っている人の方が長生きできることが明らかです。
興味深いことに、予後が2番目に良かったのは④でした。病気のことをくよくよ気にするよりも、すっかり忘れて生活を楽しむ方が病気の経過にも良い影響があるということですね。