燃え尽き症候群の心理、症状について。皆さんは、「燃え尽き症候群」というものを聞いたことがありますか?何か1つのことに熱意を注ぎ没頭し続けた後、その目的が消えたとたん虚無感や喪失感に襲われ、うつ状態になってしまうことです。
例えば、野球に打ち込んで打ち込んで甲子園を目指していて、高校生後の試合が終わった後に何をしたらいいかわからなくなるようなことです。アスリートに多く、自分からこの競技を取ったら何も残らないと感じてしまいます。
何故、燃え尽き症候群になってしまうのか、そしてその時の心はどうなっているのかを見ていきましょう。
燃え尽き症候群の心理
夢に向かっている時はただただ楽しい
まずは燃え尽き症候群になる前の、必死に物事に集中して取り組んでいる時の心理から。その時は、つらい時ももちろんあるものの、最終的に目指すもののためならなんだってできるくらいの意気込みでいるため非常に強い精神状態にあります。
一見嫌だと思えるような受験勉強だって、その先には憧れのキャンパスライフが待っていると思うと頑張れるといった状態です。もしかしたら失敗するかもしれないけど、頑張ったらその分報われると信じることで心を保っていけます。
あやふやな条件の中でも手探りで進んでいけるだけの強い心があり、そのエネルギーに費やすものは大きいです。若い人が夢に向かって頑張る姿はかっこいいので良いこととされており、それが終わった時のことに本人も周りもあまり目がいかないのがネックとなります。
好奇心を忘れてしまう
では、夢に破れた、または十分に謳歌しきった後に燃え尽き症候群になってしまった時の心理はどうなっているのでしょうか。好きなものに注いできた膨大なエネルギーのやり場がなくなったことで、まず最初に襲われるのは毎日何をしたらいいかわからないという漠然とした不安です。
好奇心旺盛なら他のことへと熱意を注ぐことができるのですが、こだわりがあるほどそれができないものです。浮気をしないタイプで、1つに情熱があると他に目を向けられなくなります。
例えば何か見つけようと社会人サークルを探したり趣味を模索しても、日時が合わないと言い訳をしたり、実際にやってみても楽しいと感じなくなってしまいます。
今まで楽しいと思ってやってきたことが基準となっているので、それに比べれば他の物事などつまらないと判断されてしまいます。日々を適当に過ごすことはできますが、今まで使ってきたエネルギーと比べると低燃費すぎて、「これでいいのか」という不安が常につきまといます。
何か足りないような気がするのに、それを埋めるものがない状態です。好きなものは作ろうと思って作れるものではないので、解決が難しいところです。代用品はない、ということですね。
今までの努力は無駄だったのかと思ってしまう
納得して終われたのなら良いのですが、そうでない場合にはそこに徹してきた自分は無駄だったのかと思ってしまうこともあります。例えば受験勉強では、頑張れば第一希望の大学に入れますが、その後に受験科目を大学で使うかと言われれば必ずしもそうではありません。
大学は専門性が高いので、経済学部に入った後に英語や化学、歴史などをバリバリ使うかと言われればそうでもありません。受験勉強とは、ひらすらその大学に入るためだけに勉強するものであり、入った後には使わない知識だと理解してしまうとやるせなさを覚えます。
ここで、それまでの努力はなんだったのだと思ってしまうのです。日本の教育システムを自分で変えるのは無理であったり、そもそも今からでは遅いことから自分の頑張りの効果は持続しないことを痛感します。
合格した時には報われたと思ったのに、いざ大学に入ってみたらそうでもなく、一瞬の燃え尽きであったことがわかります。必死になって頑張ったことが全て長期間で役に立つとは限らない、これが受験勉強をしている間にはまだわからなかったことから生じる喪失感は燃え尽き症候群の始まりと言えるでしょう。
社会に対し不満を持ち始める
例えば、英語が好きで受験英語にのめり込んだとしましょう。目的は、英語がペラペラになることだったからとしても、大人ならこれがそうはならないことがわかります。
しかし、学生のうちは学校という教育の場で教えてくれているものを全て自分のものにしたら、強くなれるような気になるものです。だから頑張るわけですが、ゴールである英語が話せるようになることまでの道のりは果てしなく遠回りです。
受験英語は、「文中のitが指す内容を3語以上で述べよ」だとか、過去分詞、現在完了形などの文法です。日本人が得意とする受け身のリーディングに重きを置いた教育ですね。
会話は全てアドリブで行われるため、このように正しい文法を頭の中で考える時間など毛頭ありません。よって、英会話と受験英語は言語こそ同じですが学んでいる内容は全くの別物です。
それに気づかず英語を頑張っていると、ある日それが効率的ではないと気付きます。英会話の勉強がしたいのに、受験に受からないとその勉強をさせてもらえないのが今の日本の現状。
こうして、社会の教育システムに不満を持ち始めるわけです。中学から頑張ってきた英語に何の意味があったのか、それを見いだせなくなった怒りが社会へと向くのは、比較的真面目に勉強してきた学生の燃え尽き症候群に多いものでもあります。
まとめ
夢がある人はいいなと思ったことがある人も多いかと思いますが、その頑張りが終わった後の状態から立ち治るのは難しい時もあります。注いだ熱が大きければ大きいほどその時は楽しいのですが、その後の反動はそのエネルギーに比例して大きくなります。
この反動が心に及ぼす影響も人によっては大きいものとなり、次へと歩みだすのに数年かかる場合もあるほどです。打ち込めるものがあるのは悪いことだとは言いませんが、一点集中でその時だけをクローズアップするのではなく、その後のことも多少考える時間があっても良いのではないでしょうか。これが燃え尽き症候群を避ける糸口になるはずで、心の安定をはかるためにも重要なことだと言えます。