ビジネスの場面で非常に重要であるプレゼンテーション。しかし、やはりプレゼンは誰しも緊張するものではないでしょうか。心理学を使った効果的なプレゼンテーションのコツについて紹介します。知識を得ることで、多少なりとも落ち着いてプレゼンができるようになるでしょう。
プレゼンテーションで使えるビジネス心理学

「AM理論」で聴衆を理解する
ある調査によると、聴衆が研修会やプレゼンの際に座る位置によって、その人のおおよその態度が分かるのだそうです。これをAM(Attitude Map:態度の地図)理論といいます。具体的には次のようになります。
- ①話者からみて左側には好意的な人が多い
- ②話者からみて右側にはあまり好意的でない人が多く、特にその中心人物は右側中央にいることが多い
- ③話者からみて右後方の人は中立的な人が多く、話のしかたによって味方にも敵にもなりうる
- ④中央に座る人は理性的な態度をとりやすい
これを踏まえると、プレゼンをするときの戦略も見えてきます。自分のプレゼン力にあまり自信がないのであれば、好意的な反応をしてもらいやすい左側の人に目線を多く置くといいでしょう。
一方で、自信がある場合はあえて右側に意識を置き、強く説得して意見を覆すと一気に引き込むことができます。また、中立的な人を敵に回さないよう、商品などを聴衆の手に回らせるときなどに、右後方から始めるとうまくいくかもしれません。
いずれにせよ、聴衆の心理がおおざっぱでもわかるだけでもかなり落ち着いて話すことができます。
アイコンタクトは1センテンス・1パーソンを意識

大勢の前で話すときに重要なのが「目線」です。人間は、じっと見つめられるとどうしても緊張してしまう生き物ですが、あまりにもキョロキョロと目線を動かしていると聴衆に頼りなさや不信感を与えてしまいます。
一方で、落ち着いた目の動きで聴衆ひとりひとりを見ながら話すと、信頼感や安心感を与えられます。どのくらいから「落ち着いた」と思われるかというと、およそ15秒程度がいいとされています。
これが1センテンスと大体同じ長さのため、「1センテンス話すまでは目線は変えず、話し終えたら動かす」というのが効果的な目線の動かし方になります。
目線の動かし方も大切で、すべての聴衆を一度は見ておかないと、「全然こちらを向いて話してくれなかった」「こちらには伝える気がないのか」と感じられてしまいます。
そこで、目線を動かすときは「Z」を意識するといいです。これは広告の配置などにも生かされていますが、人間は「Z」の形に目を動かすクセがあるためです。
また、すべての聴衆といっても、人数が多い場合はひとりひとり順番に見ていてもなかなか目線が動かないため、聴衆からは「同じ人にばかり話しかけている」と思われかねません。
人数が多い場合は2~3人の中心を見て次に進むなど、ある程度おおざっぱでも問題ありません。相手の目を直接見ると、慣れないうちはどうしても緊張してしまいますので、そんなときは相手の鼻頭を見るといいです。
こちらは目線をそらしているようでも、相手から見ると目を見られているように見えます。
姿勢は「シンメトリー」を意識

心理学では「シンメトリーの原理」というものがあります。「シンメトリー」は「左右対称」ということで、われわれ人間は左右対称のものを美しいと感じる傾向にある、という原理になります。
ある実験では、女性が男性を好きになる要素として、年収や年齢よりも左右の対称性が大きく寄与していることが分かったのだそうです。
普段の生活でもなんとなく「あの人はいやだな」「あの人はいい感じだな」と感じるのも、シンメトリーの原理が働いているからかもしれません。
そのため、プレゼンではできるだけシンメトリーを保ちながら話すことが非常に重要です。細かな内容を気にするよりも、形態を重視した方がいいのです。
しかし、プレゼンで緊張していると、気づかぬうちに変な体勢になってしまっていることがあります。たとえば、片足に体重を載せてしまったり、片手だけテーブルに載せてしまうなどがそうです。
これを防ぐためには、立って話す場合はいつもより少し大きく股を開いた状態で話すなど、ある程度練習が必要です。普段から意識しましょう。
スライドや原稿を読むだけでは効果は薄い

人間の感覚のうち、最も情報が多いのが視覚である、というのは誰しもわかっていることだと思います。これを踏まえれば、ただ原稿を丸読みしたものを聞くだけのプレゼント、視覚的なアピールを多く取り入れたプレゼンでは全く効果が異なってくることも自明ですね。
「視覚的なアピール」で最も重要なのは、ジェスチャーです。人間は「動くもの」に注意を引き付けられます。赤ちゃんでさえ、止まっているおもちゃよりも動いているおもちゃを見る時間が長いのだそうです。
だからこそ、手を大きく動かしたり、表情を大きく変えることが重要です。大げさな演技は恥ずかしいものですが、相手から見ると落ち着いているように見えるのです。
原稿はおおまかには覚えておく必要がありますが、多少いい間違いをしても大きな動きで伝えた方が相手には伝わりやすいものです。役者になったくらいのつもりで大げさにジェスチャーをしましょう。
プレゼンでうまくいかない場合は、心理学的な理解が足りないのかもしれません。いろいろと学習して、相手に伝わるプレゼンをしていきましょう。
導入、テーマ、まとめ、の3の法則「マジックナンバー」
よくいわれるのが「3の法則」。
たとえば古代中国では祭祀の際に使う器である鼎の足の本数が3本であったり大陸の覇権を争った三国志など。また、アメリカの海軍の部隊などでは3を基調にして隊を編成していくといわれます。
3という数字に関しては国や種族の壁を超えた何かしらの共通意識があるのかもしれません。またIT関連の仕事をしている人であれば、apple社の故・スティーブ・ジョブズ氏のプレゼンにも応用されていることは有名ではないでしょうか?
具体的な作り方ですが、まず「導入、テーマ、まとめ」の3部構成をアウトラインにし、テーマを紹介する観点を3つ作ります。そして、それぞれの観点について紹介するフレーズを3つ用意するとよいでしょう。
うまくまとまれば、コンパクトながら要点をおさえた論理的な資料ができあがるでしょう。特に10~15分程の短い発表に向いている方法です。
見た目が重要「メラビアの法則」
人は見た目が9割、というわけではありませんが。ルックスが重要なことは発表資料も一緒です。どんなに素晴らしい企画を発表しても資料の写真や図がガタガタな場合、あなたの発表の印象は「残念」です。
特にソフトの互換性の問題などで当日フォーマットが崩れてしまい、泣かされた人も多いのではないでしょうか?
逆にいえば、企画の趣旨やテーマに沿ったデザインやイラスト素材、写真などを駆使し構成をよく練れば、実際の内容以上に企画の印象を良いものにし、見る人を惹きつけることができます。
また、そうした資料の作成にはしばしば社内のデザイナーが加わることもあります。その際彼らが重視するのは企画の持つコンセプトです。何が問題の本質で、どう解決・発展させていくのか。それを誰に見せるのか。
企画に携わるメンバーやクライアント自身がときには気づかないコンセプトを言語化し、デザインやイラストのテイストでメッセージとして発信していく。そんな彼らの姿勢も参考に学びたいところです。
横文字を使って言葉を崩す

一見、格好付けているようにも見られますが、効果的に使えば以下のように役立てることができます。
正確にニュアンスを伝える
多くの横文字ビジネス用語はだいたい英語由来ではないでしょうか。英語は想像以上に一語一語にニュアンスがある言葉で、その言葉選びは自分の意思を言外に伝えることを意味します。
したがって海外のお客様相手の場合は日本語では削ぎ落とされてしまうニュアンスを伝えるべく、横文字を混ぜて説明をする必要があります。
ニュアンスを英語でやわらげる
ルー大柴さんのルー語カレンダーはご存知でしょうか?日本語や漢語では堅苦しく思える諺や故事成語も、横文字を混ぜたり言い換えることで、やわらかくとっつきやすい印象になるから不思議です。
そして同じようにビジネス上でのコミュニケーションでも、これを応用すれば相手に堅苦しい印象をあたえることなく意図や本音などを聞き出せるから不思議です。
例を上げてみましょう。
- a「この件については〇〇と理解してよろしいでしょうか?」
- b「この件については〇〇というイメージでよろしいでしょうか?」
どちらの文章でも同じなのですが、bの答えの方が、聞き手が自分の頭の中のプランを理解してくれたような感じがしませんか?また話し手としても訂正する場合、bの方が説明が楽そうです。
このように横文字には表現をやわらげるだけではなく、相手との連帯感、距離感の近さや親しみやすさを演出する効果も期待できるのです。
またこのイメージという言葉の軽さは、質問に使えば相手がついつい打ち解けて「+α」の情報を教えてくれるという利点もあります。正しく理解していればその付帯情報として、間違った理解をしていればその訂正として、いずれにせよ新たな説明をもらえるのです。
横文字ではないですが、中には方言やなまりで敷居の低さをアピールする人もいます。関係が良好な人たちとの間では特に効果を発揮するので、ぜひうまく使いたいところです。
まとめ
仕事術やコミュニケーション術などをまじえ、いくつか事例を紹介してきました。もちろん受け手によって反応は様々ですが、行き詰まりを感じたときにこれらの内容が少しでもヒントになれば幸いです。