セルフヘルプ・グループの人の心理的な効果について。そもそも、「セルフヘルプ・グループ」は欧米で使われてきました。セルフヘルプとは「自分のことは自分でする」ことを意味します。ですが、病気や障害などでさまざまな悩みや困難があると、自分一人ではできないこともあります。
例えば、身体的障害や精神的障害、脳障害や知的障害、依存症や死別の経験、暴力の被害者や片親家庭などです。そこで、同じような状況にいる人たちが仲間になり、相互に助け合いながら課題に取り組もうという目的でつくられたのがセルフヘルプ・グループです。自主的に集まり、対等な関係で活動を続けています。
セルフヘルプ・グループの人の心理的な効果
気持ちが軽くなるという心理
セルフヘルプ・グループは自分と同じような体験をしたり、悩みを抱えた人たちが出会います。今まで、自分一人で抱えてきた悩みを話すことができるため、「気持ちが楽になる」「気持ちがすっきりする」といった心理になります。
自分のことを語る時、泣いてしまったり、笑うこともありますが、聞く人も気持ちを理解できるため、同じように泣いたり笑ったりします。そうしているうちに、心の中に重くのしかかっていたものが、涙で洗い流されたように感じて、気持ちが軽くなっていきます。
孤独感が和らぐという心理
セルフヘルプ・グループでは、自分が経験したことを語ることができます。他の人の語る経験が自分と重なったり、他の人がその人の話を真剣に聞いている姿を見て、「私も話してみよう」という気持ちになる人もいます。
実際、話しているうちに、自分の気持ちが整理できることや自分への理解がいっそう深まることもあります。自分のことが明確になるにつれ、「自分一人ではなかったんだ」「特別なことではなかったんだ」という心理になり、今まで感じていた孤独感が薄らいでいく人もいます。
悩んでもいいんだという心理
セルフヘルプ・グループの人の中には、「悩んでいるのが悪い」「自分の弱みを知られたくない」と思っていた人もいます。周囲から「そんなことで悩んでどうするの」と言われていたからかもしれません。
セルフヘルプ・グループで話し合うと、「悩んでも仕方ないほどの嫌な経験をしたんだ…」「悩んでも当然だよね…」といった心理になります。そのため、弱い自分をありのまま受け止めることができ、自分に向き合う気力が出て、一歩踏み出そうという心理になります。
理解してくれる友達はいるという心理
セルフヘルプ・グループに参加する人の中には、以前は「自分がどう思われているのか不安」「自分に対する評価が怖い」「話すと相手との関係が変わりそうで不安」といった心理になっている人もいます。
実際に、他の人に話して傷ついた経験をしている人もいます。今まで「話したくない」と思っていたことを、他の人に聞いてもらえたことが「うれしい」と思えるようになるため、理解してくれる友だちの存在に気づきます。「何十年も友達だったようだ」という心理になる人もいます。
自分を客観的に見ることができるという心理
セルフヘルプ・グループではたくさんの体験が集まるため、さまざまな角度から自分を探ることができます。セルフヘルプ・グループの人の中には、「治らないのは努力不足」「精神的に弱いから悩む」と言われてきた人も少なくありません。
一人で悩んでいると主観的になりがちですが、多くの体験を聞くと「そんな方法もあるんだ」「そんな考え方ができるんだ」といった心理になることがあります。病気や障害が治るかどうかだけでなく、日常生活や仕事についても、客観的に見ることができ、前に進めるようになります。
もっとチャレンジしてみようという心理
セルフヘルプ・グループの人の中には障害や病気のために、ほとんど外に出ていなかったり、人と話せなかった人もいます。
例えば、吃音など話す時どもってしまう人は、相手の視線が怖くなって「目が合わせられない」「その場に居られない」といった心理になることがあります。セルフヘルプ・グループでは、年間を通していろいろな行事があり、ミーティングもあります。
会場探しに始まり、企画や司会、報告なども行います。そのため、少しづつ慣れていき、自分がこれまでできなかった行動やしなかったことをするようになります。「もっと仲間と出会いたい」「他のこともやってみたい」という心理になります。
まとめ
セルフヘルプ・グループの始まりは1935年、米国のアルコール依存症のアルコホーリクス・アノニマスと言われています。グループの参加や運営は自発的なもので、専門職や自治会とのつながりはありません。
「障害があっても恥ずかしいことではない」「ありのままの自分でいることが大切」といった考え方を大事にしています。セルフヘルプ・グループの中にはインターネットを活用して、ホームページを作り、グループの紹介や活動内容、体験などを公開しています。
抱えている病気や障害は治らなくても、情報や考えを分かち合いながら、日常生活の困難に対処することができます。