他人の目を気にしてしまう優等生の心理について。学校でも会社でも、どこにでもいる優等生。非の打ち所がない優等生は、一見使い勝手が良いように思えますが、実は欠点もあるのです。他人の目を気にしながら行動してしまう優等生の心理をご紹介します。
他人の目を気にしてしまう優等生の心理
平均的な能力が高い優等生
優等生の文字が表す通り、彼らはどんなことをやらせても優等を取る能力を持っています。彼ら自身も自分に能力があることはわかっていて、大きな挫折を知らずに人生を生きてきた人が多数です。
仕事をやらせても能力の平均値が高いので、何でもそつなくこなします。研修の段階や新卒何年目かまでは、目立った存在になるかもしれません。
しかしながら社会に出て、今まで通りに優等生のままでは、そのうちに伸び悩むことが多くなっていくケースがよくあります。それどころか、挫折や批判によって精神的にまいってしまうこともよくあるのです。
能力値が高いはずの彼らが何故伸び悩み、最悪の場合、精神を病んでしまうのでしょうか。それは、優等生特有の心理状況が関係しているのです。
挫折や失敗を回避する心理
長い間優等生を演じてきた人々は、大きな挫折をしたことがない人がほとんどです。学校でこっぴどく怒られたり、目も当てられない成績で親に説教されるような経験があまりありません。
一方で、彼らには挫折した周りの人々も見えています。劣等生や落ちこぼれを見下すまではいかなくとも、自分はこうはならないとは思っています。
しかしながら、人間生きていれば挫折の一つや二つはするのが当然です。新しい環境に入れば怒られることもよくあります。こんな時、優等生は非常に脆いのです。
彼らは平均的な能力値が高いがために、挫折や怒られるリスクを回避する心理が働いています。失敗して人より劣っていると見られたり、誰かに批判されたりすることを避けて行動しているのです。結果、彼らは決して挑戦をしません。
自分のできる範囲で物事を進めようとし、他人の目、世間の目の良い場所でとどまることに慣れています。このような優等生の心理では、何でも卒なくこなすことはできても、何かに秀でたスペシャリストにはなることができないでしょう。
他人の評価を気にする心理
優等生のアイデンティティを支えているもの、それは他人の評価です。優等という成績は誰かに与えられるものです。自分から名乗ってなれるものではありません。
他人の評価が自己を形成する構成要素なので、他人から評価されない場合は、自己を否定されているのに等しいことになります。故に彼らは他人の出した課題をクリアすることに全力を注ぎます。
他人の評価を得られなければ、自己を肯定できないからです。課題をクリアすることは誰にでも必要なことですが、問題は課題の後で、自分自身で課題を作ることができないということです。
彼らは課題をクリアして他人の評価を得ることに満足してしまって、自分自身の能力を伸ばすとか、自分自身のこだわりを見出すことが非常に苦手です。
学生なら与えられたテストはできても、自分で課題を考える論文が苦手。社会人なら先輩や上司に言われたタスクはこなせても、自分でプロジェクトを企画するのは苦手な人です。
これらの人は論文やプロジェクトを考える時、自分の視点や会社(あるいは商品)にどのような企画が合っているかということよりも、どうしたら他人の評価を得られるかということを気にしているはずです。
評価者の趣味趣向を調べたり、自己啓発本や成功体験談を参考にしたりして、他人に批判されないものを書こうとします。しかし他人に評価されたいという気持ちだけでは、論文にしても企画にしても、本当に良いものはできません。
他人の成功体験ではなく、自分の経験や能力を元にした自分自身の視点で作らなければ、本当に面白いものはでてこないのです。他人の評価を気にし過ぎていると、自分の能力はある特定の他人の評価を得るためにしか活かされません。優等生が伸び悩む理由がここにあります。
批判に慣れていない
優等生は批判に慣れていません。他人の評価を得ることで自己を保っているのですから、批判を受けることに慣れていないのは当然だと思います。しかし、自分が他人を批判することにも慣れていません。
日本語で批判というとネガティブな印象を受けますが、批判は決して悪いことではありません。根拠をもって相手を批判し、お互いの良い点悪い点を確認、反省することで、一人では思いつかなかった妙案が出て来ることはよくあります。
しかしながら、優等生の心理では批判を受け入れないことはもちろん、自分から批判をすることもありません。何故なら前述したとおり、他人の評価に最も価値を置いているからです。
他人を批判すれば、その人から反論が来るのは普通のことです。しかし日本人は和を重んじることが多いので、批判を交えた議論からお互い逃げる傾向にあります。
さらに優等生の心理では、批判からの反論は、自分への他人の評価に差し障るが故、避ける場合がほとんどなのです。他人だけではなく、権威などにも弱いのが優等生の特徴で、国や世間から認められた権威に関しては逆らうことをしません。
他人の評価が固まった権威への批判はしないことはもちろん、受け入れることもなかなかしないでしょう。一方で、自分より弱い立場、劣った地位の人間に対しては、批判することがあります。
これは根拠をともなった議論としての批判ではなく、相対的に自分の評価を高めるための批判であったり、単なる悪口であったりすることもしばしばです。
本当の意味での批判は、自分が優位に立つためではなく、議論によってさらに良い結論を導くために行います。他人の評価を一番に求めるという心理では、そのような批判を行うことはできないでしょう。
以上が優等生の心理です。誰でも他人の評価は気になるものですが、他人の評価によって自我が確立することはまずありませんし、評価などは一瞬で変わってしまう不安定なものなのです。
他人の目を気にするあまり、自分自身の視野や考えを養うことを忘れないようにしたいものですね。