境界性パーソナリティ障害の人の心理、気持ちについて。症状がさまざまあり、把握することが大変なため、専門家の間でも議論が重ねられてきた境界性パーソナリティ障害。一般に、パーソナリティとは人格または性格を意味するため、性格が障害されている、つまり「性格が悪い」「人格に問題がある」ととらえてしまいがちです。
ですが、実際はパーソナリティ機能の障害を現す不適応な症状があることという意味ですので、人格が悪いという意味ではありません。
境界性パーソナリティ障害の人の心理
生まれつきだから治らないという心理
パーソナリティとは、生まれつきの気質を基礎として、生活環境の中で形作られていくものです。その人の社会行動のパターンと考えることができます。個人の基本的な特性は生涯を通じてそれほど大きく変わることはないため、「人格」という言葉の意味に近いでしょう。
生活環境に適応できないために現れる反応のパターンは、一定期間続くことがあります。一般に、周囲の人からは「人格の障害だから一生治らない」と誤解されることも少なくありません。
そのため、「生まれつき備わったものだから…」「一生治らないのでは」といった心理になることがあります。ですが、地道に努力を重ねるながら治療を続けるなら、回復する可能性の高い精神疾患ですので、あきらめないようにしましょう。
自分をコントロールできないという心理
境界性パーソナリティ障害の特徴の一つは感情をコントロールできないことです。例えば、朝起こされると「うるさい!」、友達から「こうした方がいいよ」と言われると「なんでそんなこと言われなきゃいけないの!」と急に怒り出します。
激しい非難を浴びせたり暴言を吐くこともあります。時には本や皿など物を投げたり、相手を殴るなど激しい行動に現れることもあるでしょう。
特に、周囲の人にとっては「それほど問題ない」と思うようなことに怒りを表すため、周囲の人は動揺したり、その激しさに恐怖や驚きを感じてしまいます。怒りをなだめようとしても納得しないため、家族や友人との溝ができてしまうことも少なくありません。
極端な行動をしてしまうという心理
境界性パーソナリティ障害の人は二面性を見せることがあります。同じ人に対して褒めたり、近づいたりしたかと思うと、ちょっとしたきっかけで態度がガラリと変わり、けなしたり、避けたりまします。
また、ある日は好印象で感じがよかったのに、別の日は身勝手に振る舞うなどです。この極端な行動はいつも「白か黒か」の二曲で考えることが原因です。
基本的に、人は成長するにつれてさまざまな経験を重ね、物事を多面的にとらえることができるようになりますが、境界性パーソナリティ障害の人はその考え方が苦手です。物の考え方が柔軟でなく、極端に突き詰めて考える傾向があるからです。
他の人に対してだけでなく、自分に対しても極端な考え方をします。「自信がある」「自分ってすごい」など自分に対する評価が高い時もあれば、何かのきっかけで急変し、「自分は生きている価値はない」「自分はダメだ」という心理になってしまいます。
衝動的に行動してしまうという心理
境界性パーソナリティ障害の特徴には衝動的な行動も含まれます。例えば、気分に任せて無謀な運転をしたり、アルコールを多量に飲んだり、無茶だと思うほど食べることです。
また、物を買いまくったり、深く考えずに異性と交際することもあります。他にも、リスカットなどの自傷行為や、突然、多量に薬物を飲んでしまうこと、自殺を図ることもあるでしょう。
激しい感情や強い思いが渦巻き、周囲の人が予想もつかない行動に走ってしまいます。自分の命を危険にさらすこともあり、周囲の人に衝撃を与えることも少なくありません。
周囲の人は「悪意がある」「意図的だ」という心理になり、理解しがたい行動として見るでしょう。ですが、本人は「強い感情に振り回されてしまう」という心理になっています。
自称行為なども「慢性的に抱える心の苦しみをどうにかしたい」という心理の現れと言われています。周囲の人が「病気のせいで起こっているんだ」と認めてあげることは大切です。
見捨てられたくないという心理
境界性パーソナリティ障害の人は人への強い思い込みがあります。「この人は自分と同じだ」「あの人は自分の理想だ」という心理から相手に強く求めるため、人との距離感がうまくとれません。
この思い込みの背後には「見捨てられたくない」という心理が関係しています。「相手に見放されると孤独になる」「見捨てられるなんて耐えられない」という心理から、相手に対して怒ったり、相手にしがみつくことさえしてしまいます。
例えば、電話やメースなど何十回もすることや夜中に強引に押しかけることなどです。相手を強く求める気持ちや、近づき過ぎることへの不安や恐れがいつも心の中にあります。
そのため、特定の人を味方につけようとしたり、自分には関係ないことに巻き込まれるなど、人間関係のトラブルに巻き込まれやすいでしょう。
空虚感にさいなまれるという心理
境界性パーソナリティ障害の人は「自分は空っぽだ」「自分は無力だ」という虚しさがある人もいます。特に、激しい怒りが終わった後や人間関係が破綻した後などに感じることが多いでしょう。
「生きていても虚しい」という心理から、自分が存在していないかのように感じて、抑うつ状態になることもあります。境界性パーソナリティ障害を抱えている場合、一見、活発で陽気に見える人でも「自分の居場所がない」「安らげる場所がない」という心理が働きます。
空虚感が慢性になると、その気持ちを埋め合わせようとして、相手との密着した距離感を求めます。ですが、叶えられないことが多いため、激しい怒りや抑うつ感に悩まされてしまいます。
虚しさの背後には「自分がどんな人かわからない」という自己同一性障害もあるため、判断や行動が不安定になり、トラブルが多くなってしまうでしょう。
まとめ
そもそも、境界性とは統合失調症と正常の境界のことを指しています。統合失調症になるかならないかの状態の時、幾つかの特徴が現れますが、そのような特徴を示す人たちという概念が含まれています。
境界性パーソナリティ障害の人は「自立した生活ができないのでは…」「人生は悪くなる一方だ」といった心理になることが少なくありません。しかしながら、適切な治療とセルフコントロールで不安定な自分を変えていくことはできますので、長い目で見て上手に付き合って生きましょう。