「勉強の成績が上がらない」「仕事がうまくいかない」と感じることは誰にでもあります。さまざまな原因が関係していますが、脳の働きもその一つです。ここでは、脳の科学的な仕組みをもとに勉強や仕事をする人の心理をご紹介します。
脳科学を生かして勉強や仕事をする人の心理
まずやってみようという心理
そもそも、脳は勉強や仕事がうまくいったとき、ドーパミンという神経伝達物質を分泌します。ドーパミンは快感を生じさせる脳内物質。分泌量が多ければ多いほど、大きな快感や喜びを得ることができます。
また、脳は快感を得ようとするため、2回、3回と繰り返し行動すると、上達して学習していきます。さらに、高いレベルに挑戦し、試行錯誤していくことで、ドーパミンの分泌が増えていきます。
「やってみたらできた」という喜びのサイクルが学習意欲を起こさせます。そのため、「まずやってみよう」という心理になります。
負荷をかけて頑張ろうという心理
実は、ドーパミンはできると分かっていることを達成しても分泌されません。脳内のドーパミンが大量に分泌されるのは、一生懸命努力した後に達成できた時です。
「大変だ」「苦しい」「根気が必要」など困難な中で頑張った時は、ひときわ大きな喜びを感じるものです。苦しければ苦しいほど、成し遂げた時の喜びが大きく、脳が強化されていきます。
ドーパミンは簡単なことを成し遂げるよしも、適切な負荷をかけると大量に分泌されるため、「苦しい中でも頑張ろう」といった心理になります。
不得意なものもできるようになるという心理
「生まれつき不得意だ」「もともと才能がない」と感じる人は多くいます。勉強であれば「もともと、理数系が不得意…」「歴史は暗記科目だから向いていない」と言った心理になることがあります。
脳はドーパミンが分泌されたとき、どのように行動したか記憶し、機会あるごとに再現しようとします。不得意な科目や才能がないと思える分野でも、自分が「うれしい」と感じる点を見つけましょう。
うれしいと「やってみると楽しい」→「もう少し頑張ってみよう」→「結果が出た」といった心理になり、脳は強化されていきます。
自分を変えることができるという心理
ドーパミンが分泌されるサイクルによって、以前とは違う自分になることもできます。例えば、「野球がうまくなりたい」「会話が上手になりたい」などです。苦手なことを克服しようと続けていくなら、ある時点からできるようになることがあります。
実際、脳内ではニューロンと呼ばれる神経細胞がつなぎ変わって、シナプスと呼ばれる神経回路が新しく生まれ変わります。ドーパミンをさらに効率的に分泌さようと、快感を生み出す行動がクセになって、新しいシナプスが強固にされていきます。
無理かもしれないと思うことでも、チャレンジして成功していくことで「自分を変えられる」という心理になります。
新しい発見をしたいという心理
仕事や家事などで忙しい毎日では「これもしなければ」「…をやらなければ」と重圧がかかります。ネガティブ思考になって、「つまらない」「面白くない」といった心理になる人もいるでしょう。
それもそのはず、脳は新しい何かを発見した時、大きな喜びを感じるため、発見が少ない毎日では喜びも少なくなっています。脳の特性を生かすために、「何かを発見しよう」「新しいことを学ぼう」といった思いを持つことは重要です。
人と会話する時や仕事をする時など、「次はこうしてみよう」という心理になるでしょう。
たくさん読書をしようという心理
読書の利点の一つは脳を鍛えることができること。特に、勉強や仕事の基本である文章能力や国語力を身に付けることができます。周囲の狭い範囲ではなく、広い世界を知ることができる読書は楽しみが増していきます。
「これも読みたい」「あれも読みたい」と気がつけば、休みの時はいつも読書をしているという人も。楽しいと感じると、少々難解な表現や漢字が出てきても、読み進めます。前後の内容から「多分こんなことだろう」と想像することもできます。
楽をしていない読み方は脳に快楽を感じさせるため、「読書が好き」という心理になる人もいます。
できたことを褒めてほしいという心理
勉強や仕事など「もっとしなさい」「まだしていないのか」など言われることがあるかもしれません。本来、脳の働きは自発性のため、強制や叱咤されると喜びを感じなくなり、やる気が失くなってしまいます。
一方、褒められた体験や積極的な期待をされると、脳は良いものとして受けとめます。「自分が選んだから」という主体性。そのことが褒められると自発性は100%になります。脳は喜びを感じて、意欲的に取り組んでいくことでしょう。
脳はほめられるとやる気が起こることから、「できたことを褒めてほしい」という心理になります。
まとめ
ドーパミンが分泌されるのは、できると分かっていることではなく、「こんなこともできるの⁉︎」と感じる意外性が強いものです。それでもまず、自分にどれほどの負荷をかけると良いかを知るために、今の自分と対話することは大切です。
体の調子や脳の調子、自分の状況などを考慮しましょう。「やさしすぎず、難しすぎない」課題に取り組むなら、脳の特性を生かすことができます。