ビジネスの場面でも心理学の知識が役に立ちます。いくつかの例を、心理学をもとに紹介していきます。
ビジネスで使える心理学
初対面の人と話すときは最初の4分間と最後が重要「系列位置効果」
よく、「第一印象ですべてが決まる」というような話を聞くかと思います。では、第一印象は大体何分間で決まるのでしょうか。
心理学的には諸説ありますが、おおむね「4分程度」だと言われています。ある面接試験での実験では、採用するかどうかについて、最初の4分間での判断で決まってしまっていた、という結果が出ました。
このように、第一印象というものは心理学的にも非常に重要なもので、それを覆すことは非常に難しいということになります。人間は、物事を記憶するときに、初めの部分と最後の部分をおぼえやすい、という法則があります。
これを「系列位置効果」と呼び、特に、初めの部分をおぼえやすいことを「初頭効果」、最後の部分をおぼえやすいことを「新近効果」と呼びます。
英単語などを暗記するときに、この法則を実感したことがある人も多いのではないでしょうか。この「初頭効果」によって、第一印象が相手の記憶に残りやすいことが分かります。
同様に、「新近効果」によって、最後の別れ際の発言や行動もまた、相手の記憶に残りやすいため、重要であるということができます。
第一印象で優位に立つためには
さて、それではどのようにして第一印象を良く見せればよいのでしょうか。まず一つに、「自分から挨拶を交わす」ということがあげられます。
単純に相手が喜んだり、という面もありますが、大切なのは相手に「しまった。先にあいさつをされてしまった。」と感じさせることです。
よほど立場が上の相手でない限り、相手は申し訳なさを感じるようになりますから、こちらの優位なように話を進めやすくなります。
また、先に声を出すことで会話の主導権を得ることができ、自分のペースで話しやすくなります。たとえば、グループディスカッションなどで討論するとき、最初に口を開いた人は終始リーダー的存在になることが多いという実験結果もあります。
これは実感がわくのではないでしょうか。このように、先手を取ることが非常に重要ですので、たとえ相手の影がやっと見えるくらいの距離があったとしても、声を出して頭を下げておくことが大切です。
別れ際はすっぱりと
一方で、意外と重視されていないのが別れ際です。先に述べたように、「新近効果」により、最後の言動は記憶に残りやすいため、最後まで気を抜かず、むしろ最後こそ気合を入れなおす必要があります。
ここでやってはいけないのは、去るための一言がなかなか言い出せず、ぐだぐだ話をしてしまうことです。
これでは、仕事にルーズな印象を与えたまま帰ることになってしまいます。
自ら「帰ります」と言い出すのはたしかに言いづらいものですが、話が終わったらすっぱりと「本日は、お時間を割いていただき、ありがとうございました。」などと言ってそうそうに切り上げましょう。
また、そうすると相手には忙しそうに見えますので、「忙しい中わざわざ時間をとってくれた」という印象を与えることができます。
これは相手にとって負い目のようになるため、こちらの意見が通りやすくなります。立つ鳥跡を濁さず、と言うように、別れ際は余計な印象を与えないように心がけることが大切です。
見た目も大切「ハロー効果」
ビジネスでは最低限のマナーとして清潔感が求められますが、これは心理学的にも理にかなっています。
「ハロー効果」という効果があり、ある面で好ましい(もしくは好ましくない)性質を持っている人は、ほかの面も好ましく(好ましくなく)とらえられやすい、というものです。
たとえば、かわいい子は性格も良く見えてしまうとか、愛想が悪い人の意見はあまり好意的に受け取りにくいことなどが挙げられます。
そのため、「見た目」で好評価を得られると、たとえ同じようなことを言っていても良く受け止めれやすくなるということです。
最近のテストの採点では、解答用紙の氏名欄が見えない状態で採点することも多く、この「ハロー効果」によって不公平が生じないように工夫されています。
なんとも悲しい話に聞こえますが、実際に顔を突き合わせて面接や交渉を行う以上、避けては通れない道です。
自分の顔に自信があるならばいいのですが、そうではない場合でも、少しでも愛想よくふるまったり、清潔でスタイリッシュに見せるような努力をすることも必要になってきます。また、「ハロー効果」以外にも見た目による効果があります。
たとえば、背筋が曲がっているよりもピンと伸びている方が、相手に”強さ”を表現できます。また、クールビズなどでワイシャツの袖を折っている人も多いと思いますが、肌の露出が多いほど相手には下に見られやすい、という実験結果もあります。
ですから、面接や交渉の場においては、背筋を伸ばし、暑くても袖を折らない方が効果的です。一方で、客や上司など、上の立場の人を相手にするときは、あえて自分を下に見せることで従順なアピールをすることもできます。
ここであげたのはほんの一部分です。ビジネスの場面でも心理学が有効な場面は多くあり、うまく使うことで、有利に物事を進めることができるでしょう。