PTSDの人の心理について。事故や災害、犯罪やテロなどが世界中で起きています。ニュースで毎日のように目にする人も多いでしょう。実際に体験した人の多くは心に深い傷が残ります。
これはトラウマとも呼ばれる心的外傷のことです。心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、トラウマがもとでいくつかの症状に悩まされてしまいます。もちろん、悲惨な体験をした人すべてがPTSDになるわけではありません。
時間が経つにつれて、心の傷が癒され、後遺症が残らない人もいるでしょう。ただ、体験が命にかかわることや衝撃なことほど、長く苦しい精神状態になることがあります。どのような心理になるのでしょうか。
ストレス障害PTSDの人の心理
何事もなかったという心理
PTSDは過酷な体験がトラウマとなって、後から繰り返し浮かんでくる状態です。生死にかかわる災害やテロ、戦争や事故に遭遇すること、虐待やイジメ、犯罪の被害者になること、自殺や殺人の場面に遭遇するといったことなどが含まれます。
このような衝撃的な体験は簡単に消えるものではありません。悲惨な出来事の体験が酷ければ酷いほど、ちょっとしたことでビクビクしたり、心臓がドキドキしたりするでしょう。全身の力が入らなくなることもあります。
他の人には話せないといった質の出来事を経験している人もいます。意外なことですが、PTSDの最初の反応は何事もなかったように、気分が高揚してしまうというものです。周囲の人からみると妙に元気なのです。
これは急性ストレス反応とも呼ばれ、心の防御反応が起こっている状態。「恐怖体験はなかったことにしよう」という心理が働いています。ただ、一般にこの反応は数日間でおさまり、その後いくつかのPTSDの症状が起こります。
体験を繰り返し思い出してしまうという心理
大変な出来事に遭遇しているため、普通は思い出したくないはずです。なのに、PTSDの人はそのときの出来事の情景が何度も浮かんできてしまいます。これは、フラッシュバックとも呼ばれます。
時には、その出来事が音声となって聞こえてくることもあります。フラッシュバックが起こるのは、その出来事に似た場所や同じような香りがした瞬間が多いでしょう。繰り替えし思い浮かぶたびに、苦痛を覚えて動けなくなることも。
また、出来事を思い出してしまうため、眠れなくなることもあります。恐怖の体験が夢に出てきて、その度に目が覚めてしまいます。また、同じ夢を見て繰り返し恐怖を感じるという悪循環になります。
特に、犯罪やイジメなどのひどい状況に遭遇した人は、「暗闇から加害者が現れるのでは…」という心理から、電気を消すことができなかったり、暗くなってからの外出ができなくなることもあるでしょう。
感情がないような気がするという心理
PTSDの人はその直後から、「自分が自分でないような気がする」といった心理になる人もいます。自分でも変だと感じているのですが、感情がなく淡々としてしまうのです。また、感覚に現実感がなくなってしまいます。
目の前の情景が映画のスクリーンに映し出されているかのように見えてしまうことも。冷静で涙も出ないこともありますが、怒りっぽくなったり、集中力が低下することもあります。人によっては、このような症状だけが強く現れることもあるでしょう。
一種のうつ状態のようになって、それが長く続くため慢性的なることもあります。特に、命の危険を感じる体験だけでなく、離婚や失業、友人の自殺などを体験した後にうつ状態が続くこともあります。これは複合型PTSDと呼ばれています。
出来事が思い出せないという心理
日常生活では、うっかりミスをするといったことは誰にでも生じます。例えば、料理をしていてうっかり包丁で指を切ってしまった場合、しばらくの間は包丁を見ると切ったときの情景を思い起こすでしょう。
指を切ってしまった瞬間やジンジンとした痛みなどです。傷が深く痛みがひどいほど、「なるべく包丁を持ちたくないな」という心理になります。包丁を見るだけで嫌悪感を感じたり、「包丁を使いたくない」という心理から、しばらく持つことができないこともあるでしょう。
一方、PTSDの人は「出来事をよく思い出せない」という心理になることもあります。これは、解離とも呼ばれ、体験したことがあまりにも強烈であったため、そのときの状況やその一部の状況を思い出せないのです。
一般に、出来事の後半年以内に起こることが多いでしょう。ただ、人によっては何年もの潜伏期の後に起こることもあります。
まとめ
PTSDは激しい恐怖体験によって苦しむ精神的な状態です。特に、不眠や悪夢が続く場合は、早めに精神科医を受診した方が良いでしょう。災害や事故の場合、同じような体験をした人同士で話したりして、気持ちを共有することが回復に役立つとも言われています。
なるべく、周囲の人は無理に話を聞き出したりせず、本人が話したくなったらよく聞いてあげましょう。出来事の内容によっては、「話したくない」「思い出したくない」という心理から、治療を後回しにしてしまう人もいます。事情をよく知っている人が同行して受診することもできるでしょう。